杉沢皮膚科クリニック

帯状疱疹（たいじょうほうしん）は、小さな水ぶくれが幾つもできて、痛みを伴うことの多い病気です。疱疹という言葉は、小さな水ぶくれが皮膚の一部に集まってできた状態をあらわします。典型的な場合は、数センチ幅の帯のように並ぶので、帯状疱疹といいます。体のどこにでもみられますが、左右どちらかにしかできません。

ウイルスによる病気です

この病気は、水ぼうそうのウイルスが原因で起こります。水ぼうそうは子供に多い病気ですが、治った後もウイルスが神経に潜んでいて、加齢や体調の悪化などで免疫力が低下した際に、再び増えて帯状疱疹として発症します。同じウイルスによる病気ですが、水ぼうそうは他の人からウイルスが感染して生じ、帯状疱疹は自分の体に潜んでいたウイルスが増えて起こりるわけです。ウイルスが潜んでいた神経に沿ってできるので、体の左右どちらかに、帯のような形で水ぶくれが並びます。神経が障害されるため、痛みが生じることになります。

症状

初めにチクチクとした痛みが生じ、何日かして体の一部の左右どちらかに、赤い斑点や数ミリの水ぶくれが帯のように並んで出てきます。痛みの程度は人によって違い、お子さんや若い方は軽く、年齢が高くなるほど強くなる傾向があります。激しい痛みで眠れなくなったり、高齢者では食欲が低下したりする場合もあります。痛みのほかに、かゆみやしびれ、いわ感を感じる方もいます。水ぶくれは、時間がたつと黒いかさぶたになり2週間くらいで治っていきますが、一部の人では皮膚がえぐれて潰瘍（かいよう）になり、治るのに1～2か月かかることもあります。痛みは、若い方では1～2週間、普通は1か月程度で感じなくなる方が多いようです。しかし特にシニアの方で重症の場合、帯状疱疹後神経痛といって、ひどい痛みが何年も続くことがあります。

できる場所によって、皮膚のほかにも障害がでることがあります。ひたいや鼻にできると、まれに目に障害がおよぶ場合があるので、眼科をご紹介します。耳やその周囲の帯状疱疹では、耳の中（内耳）の障害により、顔面神経麻痺によって顔がゆがんだり、めまいが生じたりすることがあります。この兆候がある場合は、早期に入院し治療を受ける必要があります。腕などで重症の場合は、運動神経が障害され、腕が上がらなくなったり、指の動きが悪くなったりします。外陰部にできると、膀胱や直腸に障害がおよび、尿が出にくくなることがあります。これらは、どれも稀にしか起こらないのですが、注意が必要です。

治療と生活上の注意点

治療は、抗ウイルス作用のある内服薬（のみ薬）が主体です。皮膚を保護する外用薬（ぬり薬）や、痛み止めなども一緒に使います。体力（免疫力）が落ちている時に発症する病気ですので、特に初めの一週間くらいは安静が必要です。社会人の場合は、できるだけ残業を少なくし、規則正しい生活をして下さい。

ほかの人に帯状疱疹がうつることはありませんが、水ぼうそうにかかったことのない人には、水ぼうそうとしてうつる可能性があります。小さなお子さんなど、水ぼうそうにかかったことのない人への接触は、1種間くらい避けてください。お子さんの場合、登校や登園を控えて頂くことがあります。

帯状疱疹は一生に一度の病気と以前は言われていましたが、日本人の平均寿命がのびるにつれ、2回以上できる方も時々みられるようになりました。膠原病などで免疫を低下させる治療を受けている方、がんや白血病の方に多いのですが、比較的健康な方でも高齢になると再発することがあります。

予防

帯状疱疹の発症や重症化の予防は、水ぼうそうのウイルスに対する免疫を強くすれば可能になります。その手段としてワクチン接種があります。帯状疱疹ワクチンには、「弱毒生水痘ワクチン」と、「シングリックス^®」の2種類があります。水痘とは水ぼうそうのことで、「弱毒生水痘ワクチン」は、以前からお子さんに接種されている水痘ワクチンとおなじものです。両方とも、対象年齢が50歳以上です。効果は「シングリックス^®」の方が高いのですが、コロナワクチンのような筋肉痛や疲労感などの副反応がある、2回の接種が必要、費用が高いなどの問題点があります。逆に「弱毒生水痘ワクチン」は、1回の接種で済み、副反応はほとんど無く、費用も比較的安いのですが、効果が高いとはいえない（発症予防効果は約半分、帯状疱疹後神経痛の予防効果は約3分の２、５年程度で効果が薄れる）のが難点です。どちらを選ぶか、悩ましい所ですね。

帯状疱疹が治った直後の方が、「あんな痛い思いは二度としたくない」とワクチン接種を希望することがあります。帯状疱疹にかかると、ワクチンを接種したのと同じ予防効果がありますので、5年くらいは接種の必要がないでしょう。