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トコジラミ

トコジラミ(ナンキンムシ)は、人間の血を吸って痒みをひきおこす虫です。以前から外国のホテルに宿泊した際などの被害が問題になっていたのですが、観光立国政策もあり、旅行者などの荷物にまぎれて国内の宿泊施設や自宅に持ち込まれるケースが増えています。最近、テレビなどでも取り上げられているようで、不安に感じている人も少なくありません。

トコジラミは発見や駆除が難しい虫で、自宅に住みつかれると被害が長いあいだ続くため、確実な診断と対策が重要になります。伝染病の原因になることはまずありませんので、ご安心ください。

 

どんな虫?

 名前と違ってシラミではなく、カメムシの仲間です。成虫は5mmくらいの大きさですので、目で見えます。幼虫は1~4㎜です。茶色で細長く平べったい形ですが、たくさん血を吸うと丸くて少し大きくなります。屋内に生息する虫で、昼間は壁の割れ目や家具の裏側など狭くて暗いところに潜んでおり、夜に部屋が暗くなると、寝ている人の血を吸うために出てきます。歩きまわるだけで、飛んだり跳ねたりすることはありません。温度が低い(20℃以下)と動かなくなるので、冬には被害が少なくなります。

 

症状は?

 一般に虫刺されの症状は、赤くて丸く少し盛り上がった発疹(紅斑、丘疹)として始まり、時間がたつと茶色くて平たくなり、消えていきます。この症状からは、蚊やイエダニなど他の虫と区別できないことが多いのですが、トコジラミの場合にはいくつか特徴があります。

  • 衣服から露出した皮膚から血を吸うため、すねや腕などの被害が多い
  • 同じ部屋に寝ている人の多くが、被害にあう(巣のある場所からの距離や、虫の通り道などにより、例外もあります)
  • 多数の虫が生息している場合は、毎日のように発疹が増え続ける(最近刺された赤い発疹と、何日か前に刺された茶色い発疹が、混じって見られます)
  • 1匹の虫が、刺した場所の近くをまた刺すことがあるので、数個の発疹が集まって見える場合が少なくない(以前は、刺し口が2か所あったら南京虫だと言われていました)

ただし、①~④は他の虫でもおこりうるため、確実に診断するにはトコジラミ自体を見つける必要があります。

 

見つける方法は?

 トコジラミは、屋内の見つけにくい場所に隠れて住んでいます。寝室の壁や柱の割れ目、家具や装飾用の絵などの裏側、引き出しの隙間、カーテンや布団の縫い目などを、まず探してみてください。血糞というトコジラミの糞が、いくつも黒い点として認められる場合があります。複数の巣があることも、少なくありません。見つからない場合は、「寝たふり作戦」を行います。夜になったら寝室の照明を消し、パジャマなどからすねや腕を出して寝具の上で横になり、寝たふりをしてください。30分くらいしたら灯りをつけて、急いで寝具のまわりを探します。トコジラミは血を吸って満腹になると、数日は出てこないので、3日間は続けて行う必要があります。この方法で見つからなければ、トコジラミの可能性は低くなります。見つかった虫がトコジラミと確信できない場合などは、ご相談ください。

 

治療は?

 治療は、他の虫刺されの場合とほとんど同じです。比較的強いステロイド外用薬をぬることが主ですが、症状が強い場合には、抗ヒスタミン剤などを内服して頂きます。

 

駆除する方法は?

 問題は、トコジラミの駆除です。専門の業者に頼んでも、完全な駆除が難しいことも少なくありません(悪徳業者にご注意ください)。一般的な殺虫剤(ピレステロイド系)は効かないことが多く、カーバメート系(バルサンまちぶせスプレー®)やオキサジアゾール系(トコジラミゴキブリアース® )などが有効とされます。この2剤は待ち伏せ型といって、噴霧された場所を通った虫が死ぬことになるので、巣や通り道を知っておく必要があります。使い易いものとしては、新しい殺虫成分のブロフラニリド(ゼロノナイト ゴキブリ・トコジラミ用 1 プッシュ式スプレー® )があります。部屋の中で噴霧すると、隙間にも薬剤が入っていくので、巣や通り道の全てを把握しておく必要がありません。いちど使用すると、半年~1年間は効果が続きます。これらの薬剤が販売店に置いていない場合には、インターネットで購入してください。使用方法は、上記のホームページに載っています。

 

 疥癬(リンク)の場合も同じですが、自分の症状をトコジラミだと固く信じこみ、不要の対策をとったり、トコジラミだと同意してくれる医師を探して複数の医療機関を渡り歩いたり、医療機関でトコジラミに間違いないと繰り返し主張したりするかたがいます。冷静な判断をお願いします。

最後に、お役に立ちそうなWebサイトを紹介しておきます。

横浜市(トコジラミについて)

厚生労働省(衛生害虫トコジラミ に対する対策について)

この項の記載に当たっては、兵庫医科大学の夏秋優 臨床教授の著作(Dr.夏秋の臨床図鑑 虫と皮膚炎 改訂第2版 学研メディカル秀潤社 2023 など)およびご講演の内容を主に参考にしました。夏秋先生に深謝いたします。写真などは、当院を受診した患者さんのものを、同意を頂いたうえで載せております。

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